ゲームマスターズアカデミー〜第ニ回〜

さて、2回目の講義を始める。
前回の講義において、おおかた必要な物はそろえた。そう、おおかただ。
実のところ、一番重要なものについては何も語っていない。
そう、今回の講義は、その一番重要なもの『シナリオについて』だ。

1.シナリオとはどんなものか。

シナリオと言っても演劇のシナリオ(脚本)とはかなり異なる。
演劇のシナリオの例をあげるとシェークスピアのロミオとジュリエットなんかになるが、もし手元にあるなら開いてみていただきたい。
そこには登場人物とそのセリフ、そして状況描写や説明が書き綴られている。
脚本家はストーリーに関わる全てをシナリオの中に描き、役者はそのシナリオ通りに演技をする。
すべては始めから決められており、途中で変わったりする事はない。
つまり演劇のシナリオはこのように脚本家(GM)によって全てが決められており、役者(プレイヤー)は
それをいかにうまく演じるかに労力を費やす。

では、TRPGのシナリオはどうか?
TRPGのシナリオの構成要素を挙げると次のようになる。

1)シナリオのおおまかな流れ

2)イベントとそれに付随するデータ

おおざっぱに分けると上の2点である。

つまり、TRPGのシナリオの中には役者のセリフや行動は含まれないということなのだ。
ストーリーのだいたいの流れと、それに付随する状況のみがシナリオを構築すると言ってもよいかもしれない。

2.さぁ、シナリオを作ろう!

さて、そのシナリオをこれから用意するわけだが、おそらくこれから始めてゲームマスターをやろうとする人は
「シナリオを作るのって難しいんじゃ……」
と不安になるに違いない。
もし、どうしても自分で作る自信がない場合は既成シナリオに頼ってしまうのもひとつの手である。


○既成シナリオの弱点

とはいうものの、既成シナリオにはいくつかの弱点がある。


ひとつは、プレイヤーがそのシナリオを読んでいる場合。
プレイに参加するはずのメンバーが、使用しようとしているシナリオをすでに読んでいると
シナリオの中身がばれてしまうだけではなく、内容を知っているプレイヤーにとっては
プレイ自体がつまらないものになってしまう危険がある。

もうひとつは、プレイしようとしているシナリオと、参加しようとしているプレイヤーキャラクター(以下PCと略す。)が合わない場合。
極端な例をあげると、罠はずしの技能が必要なシナリオで、PCに罠はずしが出来るキャラクターがいないなどの場合である。
場合によってはバランスをとりなおす、つまり不都合が出る部分を改良する事で回避する事が出来る事もあるが
もしそこがシナリオの核だったりすると話自体が成り立たなくなってしまう。


以上のような弱点がネックとなる場合がある。もっとも、裏を返せば、この弱点をクリアできれば、既成シナリオに頼ってしまえばよい。
(おおかたの場合は)必要となる情報はそのシナリオの中に書かれているから、あれこれと悩むこともないだろう。

ただし、プレイする前には充分すぎるほどに熟読しておくこと。頭に叩き込むくらいの気持ちでいるといい。
そうすれば、実際にプレイする時にいちいち見返して、話を中断することもない。
あと、シナリオを自作する際の参考にもなるから、必ず熟読するべきだ。


○既成シナリオが無い場合の抜け道?

さて、不幸にして(もしくは幸運にして?)使おうとしているシステムに既成シナリオがなかった場合には
どうするか?

作ってしまうしかない、といってしまえば、身もふたも無い。なので、ひとつ手抜きの技をあげる。

まず、なんでもいいから既成シナリオをひとつ用意する。
ジャンルが違っていてもかまわない、というか、違っていたほうが好都合だ。
これを、やろうとしているシステムに合わせて改良してしまうのだ。
この方法を使うと、シナリオの流れを考えなくてもすむという利点がある。

ただし、データのバランスには充分に注意しなくてはいけない。
PCがもうすでに作られているなら、それに合わせて。
もし無いなら、だいたいのキャラクターのレベルに合わせて調整する。
これでシナリオの完成である。
けっこうバックボーンを変えると、まるで別の話のようになるから始めの内はこれでもいいだろう。

○さぁて、自作だっ!!!

上のどっちも嫌だ!という人は自作しかない。
必要になるものはネタとシステムのみである。
ネタはなんでもいい。映画、漫画、小説、アニメ、ドラマ、もしくは時事ネタでもいい。演劇や、オペラなんてのも手だ。
とにかく、お話をつくるのに使えそうなネタがあればいい。
とはいえ、いきなり考え出しても出てくるわけじゃあない。
もしネタが考えれば沸いて出るならいいが(そんなだったらどんなにいいか。)おおかたの場合は、ネタに困るものである。
ネタを必要なときに取り出すにはいくつかやるべき事がある。

1)情報収集
といっても、慌てて調べまわる必要は無い。
普段から色々なものに対してアンテナを広げておく事が大事なのである。
できれば、そうやって入ってきた情報はなんらかの形で保管しておくべきだ。
人間の記憶力ほどあてにならないものはない。
いざ使おうという時に使えないようでは情報収集の意味はない。

2)情報の練り直し
ただ漠然と情報だけあっても役には立たない。
それを活用するためには、そこからイメージを膨らませることが必要である。
手元にある情報についてもう1歩つっこんで考えてみるのだ。
他のものにつながるような要素が見つけ出せればしめたものである。

まぁ、とりあえず、以上の2つをやっておくだけで、ネタ探しは楽になるだろう。

使うネタが決まれば、それを物語の大筋に据えてイベントをちりばめ、データを書きとめるだけである。

3.シナリオはどれくらい書いたらいいか?

実際に紙に書く場合にどれくらいの情報を書きこんでおけばいいのか、という疑問が出てくるかもしれない。
結論から言うと、これはその人の技量による、と言える。
実際、ウチのメンバーであるLAFなどはA4のレポート用紙一枚で済ませたりする。
私はイベントに関する詳細などを書きこむので、それこそ市販のものくらいの厚みになったりする。

要は、
実際のプレイを行う時に、プレイを円滑に進めるために、自分の手元(つまり、すぐにわかる位置に)どれくらいの情報があればよいかを考えればいい。
基本的には、そのシナリオにどんな流れがあって、どんなイベントが起きるか、そのイベントで必要なデータは何かがわかるようになっていればいいだろう。私が作る場合を例にとると次のようになる。

1)話の流れを表すフローチャート
これはなにもフローチャートまで書かなくてもよい。おおまかな流れさえわかるようなものがあればよい。

2)シナリオで起こる各イベント内容とそのデータ。(場合によってはNPCのセリフまで考慮。)
これは必ず必要。ただし、アドリブが得意ならNPCのセリフまで考えておく必要はない。
最低限必要なのは、そこで何が起こるか?という情報と、それに関わるデータのみである。

3)補足資料
これは、たとえばシナリオに登場する町の地図であるとか、小道具などのなくてもいいが、あるとプレイが楽になるようなものである。なくてもいい。

といった感じである。



さて、今回の講義はここまでだ。ずいぶん駆け足で説明してきたのでわかりにくいところもあるかもしれない。
質問などは随時受け付けているから、その場合はメールなどで送って欲しい。
では、次の講義でまた会おう。

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