ゲームマスターズアカデミー〜第五回〜

〜第5回〜

さて、秋も深まる今日この頃、諸君は精進しているだろうか?
今回の講義は、私、南雲ではなく、L.A.Fに講師を務めてもらう。
議題はマスタリングスタイルについてだ。
では、第5回の講義を始めるとしよう。

1.キャラクターの死

キャラクターの死については前回も触れていますが、今回はPCがコントロール出来ない死に直面した時どうするかと言うことです。
そこでまず、コントロール出来ない死を大きく3つに分けて考えます。

まず1つ目は戦闘中。2つ目は情報不足等に起因する判断ミス。3つ目は思慮のない行動。
どう考えてもこのPCは死ぬだろ、という状況は大体この3つに分類出来ると思います。
前回はPCの死は強制されるべきでないと述べていますが、私はこの3つの状況を全て平等に扱う必要はないと思います。
特に3つ目については、行動宣言時に忠告すべきですが、それで行動を変えないようなら同情の余地はないと思います。

さて、何故この様な話をするかというと、PCの死への対応がマスタリングスタイルと大きく関わってくるからです。
ここで言うスタイルは、ジャンルとかはほとんど関係ありません。簡単に言うとプレイングスタイルと似たようなものです。

2.マスタリングスタイル

では実際にスタイルについて講義する前に注意点を1つ。
ここで挙げるスタイルはあくまでも単純なパターンであるということです。
ですから、実際にGM経験のある方はこのパターンに当てはまらなくても気にすることはありませんし、無理に当てはめる必要もありません。

ここでは3つのパターンを挙げ、それぞれEASY、NORMAL、HARDと名付けます。
これはコンシューマゲームの難易度とほぼ同義と考えてもらって構いません。


1)Easy
まず1つめのEASYについて、このタイプは簡単に言うとストーリー重視。エンディングはハッピーエンドが多く、謎解きや戦闘にはあまり比重を
置かないタイプです。各種裁定も甘めで、PCの死についても可能な限り救済します。が、別にそれが悪い訳ではありません。
重要なのはみんなで楽しむことであり、このタイプはみんなで1つのストーリーを共有することに重点を置いているにすぎません。
ただ、注意しておきたいのは、ハッピーエンドにこだわりすぎて強引にPCを誘導したりしてはいけない、と言うことです。

2)Normal
次に2つ目のNORMALについて、このタイプは簡単にいうとノリ、アドリブ重視。シナリオ自体あまり細部までは決めていない場合の方が多いです。
各種裁定、PCの死などもノリで完全成功にしたり絶対失敗にしたりとムラっけのあるタイプと言えます。
このタイプが重視するのはプレイングであり、GM、PLの真剣さです。どこまでゲーム、PCにのめり込むかが勝負となります。
そのため、PLに対して行動等にしっかり責任を持つことを強要しがちなのが注意点です。

3)Hard
最後に3つ目のHARDですが、このタイプは簡単に言うとデータ、システム重視。シナリオの細部まで作り込んでおり、PCの死にも厳密に裁定します。
このタイプが重視するのは緊張感です。コンシューマゲームのWizardryのような死と隣り合わせのプレイを楽しむことに重点を置いています。
注意点はデータのバランスや、シナリオ作りが難しいことです。

3.重要なのは・・・

さて、ここまでで各タイプが結局楽しみ方のスタイルだ、と言うことは分かってもらえたかと思います。
ちなみに3段階の難易度は単純にPCの死にやすさで決めました。マスタリングは自分のやりやすい形があると思うので難易度はないと思います。
自分がやりたいと思うタイプでやればいいでしょう。これは経験のない方が、実際にマスタリングをする際の参考としてパターン化しただけのものだ
ということを忘れないで下さい。

しかし、重要なのはPLの事も考える事です。GMは管理者である以前にストーリーテラー、エンターティナーなのです。
自分の世界の来訪者(PL)の要求に応え、楽しませる事もまた重要な仕事なのです。ですから私は自分がどういうタイプかをメンバーに
公言してますし、事前にこんな風なスタイルでやるよ、と明言しています。

4.まとめ

では今回のまとめです。まずは自分のスタイルを決める。これによりシナリオ作成等も指針が出来ると思います。
そして、そのスタイルにこだわりすぎない事。こだわりすぎでセッションがつまらなくなっては元も子もありません。

TRPGはみんなで楽しむことが至上命題です。
普段から堅苦しく考える必要はありませんが、それを忘れたら自分だけでなくみんながつまらない思いをします。




【補講:マスタリングスタイルの構築】
講師:南雲仁

さて、ここからは補講という形でマスタリングスタイルについて考えてみたい。
マスタリングスタイルという言葉は非常に広範な意味だと私は考える。
そのゲームマスターがどういうシナリオを好むか。どういうストーリー展開を好むか。戦闘に関してはどうか、などなど。
L.A.F氏は、行為判定の厳しさを主眼において、マスタリングのスタイルを三つに区切ったが、無論これはマスタリングの難易度ではない。
分解して解説してみよう。

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1)Easy=
ストーリー重視タイプ

要するに、ストーリーを共有する事をまず重視しようよ、というのがこのタイプにあたる。謎解きや戦闘というイベントは、プレイヤーにストレスを
感じさせない程度のものにし、テンポのいい進行を心がける。いわゆるバッドエンドに陥る事は少なく、プレイヤーの失策に対するフォローも
多い。ライトなセッションのスタイルである。

だが、このタイプは『甘いマスタリング』に陥りがちでもある。もちろんプレイヤーとしては思うように行動できたほうがいいだろうが、いつでも
そうだと緊張感も削がれるし、なによりGMとPLの間に甘えができてしまう。そうなっては、すでにゲームではなくなってしまうだろう。

2)Normal=
テンポ重視タイプ

こちらは、セッションの進行におけるテンポを重視しよう、というスタイルである。前述のストーリー重視タイプと比べるとストーリーは細部までは
決めずに、プレイヤーのノリにあわせてアドリブで話を展開させていく事になる。行為判定はそのストーリー展開のテンポを支えるものでそこに
厳密さは求めない。

ストーリー上、テンポは大事である。プレイヤーを飽きさせないようなイベントや場面展開はGMとしても必要なテクニックだろう。だが、しかし
ノリやアドリブに主眼を置きすぎると、ストーリーが置き去りにされるという危険もある。もちろん、アドリブでも楽しいセッションができるGMもいるのだが。

3)Hard=
ルール重視タイプ

ルールに従った厳密な判定、システマティックな戦闘、詳細まで作りこまれたシナリオをプレイするタイプである。
練りこまれた隙のないシナリオをプレイする為、プレイヤーとゲームマスターの頭脳勝負になる事が多い。戦闘においてもしっかりとした戦略が
必要とされ、そこには常に緊張感が漂う事になるだろう。L.A.F氏が言うように、生死についての裁定に関しても厳密なので、それこそぎりぎりの
スリルを味わえるに違いない。

だが、この手のタイプが陥りやすいのが「キャラクターは死なせてなんぼ」という困ったタイプのマスターである。
戦闘シーンというのはTRPGにおいても華になりやすい部分ではあり、また、この部分が楽しみであるプレイヤー諸兄もいるだろう。
そこでスリルを求めるべく戦闘を厳しくやるのはいいのだがそのバランスを取り間違えては、意味はない。
あくまでも、厳密にバランスをとったギリギリの線を頭を捻って遊ぶのが楽しいのであって、どちらかが一方的に打ち倒してはいけないのだ。


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つまり、マスタリングスタイルとは、一つのセッションを構築し、それをプレイするにあたって、GMである君達がプレイヤーに何を見せようと
しているか、という事である。上記の例で言うと、プレイヤーにストーリーを楽しんで欲しいのか、ストーリーは2番目でわいわいがやがや
楽しむのが大事なのか、それとも、戦闘や数々のしかけで頭を捻って欲しいのか、という事になる。
どんな場合でも、そこで一番重要とされるものは、GMとプレイヤーで何かを共有して楽しむという事であって、GM側からのおしつけになって
しまわないように注意しなければならない。そうであれば、主眼をどこにおいたセッションであれ、何かを共有できたという満足感や達成感を
得る事ができるだろう。

諸君らがセッションにおいて重要視したいものを考えてみよう。そこから君達のマスタリングスタイルが構築されるだろう。

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長くなったが、今回の講義は以上とする。質問は掲示板で受け付けるので、どしどし送ってくれ。
では、諸君らの健闘を祈る。次回の講義でまた会おう。

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