ゲームマスターズアカデミー〜第六回〜

〜第6回〜

ゲームマスターをするに当たって準備が必要なのは今までも述べてきた通りだ。
その準備、つまり『シナリオ作成』に関して述べてみようと思う。
今回は特別講師に白夜氏を迎えて講義を行なおうと思う。


1)ストーリーラインの連想

シナリオの作り方、ですが。
ごくごく個人的なものなので参考にはなりにくいと思いますが、一応私の作り方などを言わせて頂きますね。

話を考え始めるきっかけは大体連想ゲームのようにしていきます。
映像的な風景やファンタジー舞台なら魔法の品などをメインにすることが多いです。
時には遺跡の罠だったりもするので思いついたものなら何でも使います(笑)
やってみたいシーンや出したいNPCなどが出来て、それからシナリオを作っていきます。
そこから、そのシーンに至るまでの経緯やNPCなら性格。マジックアイテムならその性能などを考えていきます。
それが決まると、シーンの時にはその画面まで誘導できるようなストーリーを考えて行きます。
1面の花畑とかだとそこに死体が埋まってるから、とかかなり思いつくままに連想して行きます。
埋まってる死体は依頼人の探してる人で、、、などです。


2)導入部を構築する


一通りストーリーになるとそれは1回置いておいて、今度は依頼人の頼みたいこと、目的などを考えていきます。
これは先に考えたストーリーに照らし合わせつつ考えてきます。
依頼人がいらないとき、矛盾するとき、依頼する理由が無いときなどは冒険者を巻き込む誘導の方法などを考えて行きます。


3)情報をどう与えるか


依頼人の目的や理由が完成したらそれを受けて冒険者がとるであろう行動を考えます。
冒険者に知っておいて欲しい情報や噂話。地図があるならそれを作ったりもします。知らなくてもいいけど裏事情がある場合はそれも。
依頼人の裏などはあるときは当然作りますが無いときでも冒険者が気にしそうな時は一応簡単な説明も作っておきます。
ここで先に作ったストーリーと矛盾するときは両方を訂正したり付け加えたり背景の事情を入れたりもしていきます。


4)プレイヤーの誘導に関する下準備


以上が出来上がると、次は冒険者にどう動いて欲しいか簡単にまとめて行きます。
冒険者が先に考えた情報を手に入れればどう動くか、何を調べるか、などをまとめきます。
ここでも矛盾やわからないことなどが出てくるのでそれにあわせて情報を増やしたり邪魔なシーンは切り捨てたりします。


5)シナリオの推敲


この時点ではじめとかなり話が違っていることが多いので、読み直してみます。
面白くない、と、本人が思ったら中断して物置用のフォルダにまとめて捨てておきます。
大体にして自分の作ったものは身内の欲目(ちょっと違いますが)も入るので、その本人が面白くないと
思ったら他人は確実に面白くない、が私の考えです。
かといって絶対面白いと思うものは独り善がりなものになっている可能性が高いので、これもやめます。
やってみたいかな、くらいに思えるものだけをやるようにしています。
(そういうのは全部まとめて、別の話で再利用したり手を加えたりして使うことが多いです)


6)相手がいる場合の行動指針の構築


最後に、敵がいる場合は敵の思惑と引っ掛け(罠)などを考えて、それに冒険者が引っかかった場合はどうなるか
伏線に気がつかなかった場合などの流れも簡単に考えておきます。

これで矛盾さえなければ、完成と言うことにしています。
細かい部分はセッション中にPCの行動次第で変わっていくので情報の出所や時にはシーンごと削ったりすることも
ありますが、事前準備はこれくらいです。最低でも「依頼者の行動理由」「敵の行動理由」を決めて置けば、予想外の方向に
話がずれたときにもNPCの行動は当初の目的に添って進めて行くことができます。そこをPCがどう関わっていくのかで
話を進めることも出来ると思います。

以上が私のシナリオの作り方です。


さて、簡単にまとめておこう。ここで述べられたシナリオの構築法には6つのステップがあった。
それは以下のとおりだ。

1)ストーリーラインの連想
2)導入部を構築する。
3)情報をどう与えるか。
4)プレイヤーの誘導に関する下準備。
5)シナリオの推敲。
6)相手がいる場合の行動指針の構築。

A.連想ゲームによるシナリオの構築

シナリオを構築するに当たってはじめからストーリーがある人は恐らくはそういないだろう。ほとんどのゲームマスターが
キーになるアイテム、場面、セリフ、キャラクターなどから連想ゲームを始めるところから始まると思われる。
だが、ここでつまづく人も多いのではないだろうか?ひとつのアイテム(品物やセリフ、キャラクターを総括してとりあえずこう称するが)から
話を展開させるには、自分の中にストックを持っている必要がある。もし、諸君がシナリオ作成において、この段階でつまづくのであれば
一端手を止める事をお勧めする。
以前にも書いたが、シナリオを作るのに必要とされるネタは沸いて出てくるものではない。昔、どこかのゲームデザイナーも言っていたが
「ネタよでてこいー。」と言っていて出てくるのなら誰も苦労はしないわけだ。これまでの講義では、ネタを書きとめておくノートを作る事を
お勧めしたが、それに近い事がここでは必要とされる。つまり、連想ゲームに足りないパーツを探す作業である。
小説でも漫画でも映画でもテレビでもいい。今までに自分の中にないストーリーやセリフを他で得る事は、別にパクリではない。
いや、パクリでもいいのだ。つまり、シナリオを構成する連想ゲームのつなぎを作る意味で、当てはまるパーツが見つかればよい。

B.導入部の難しさ

さて、連想ゲームが終了したら、諸君らの前にはある程度の形のストーリーが出来ているだろう。これをストーリーの核とする。
だが、これは小説でも漫画でも、ましてや映画でもない。役者はこれから登場するのであるし、しかも、セリフ回しは役者任せである。
舞台と環境だけが用意された脚本の中でどうやって役者に動いてもらうか考えなければならない。そこでまず重要になるのはやはり、導入である。

セッション毎にGMの頭を悩ませる存在である導入部についてはいくつかのパターンを考えておくべきだろう。
GMの思惑とPLの思惑はすれ違って当たり前だし、一緒になる方が稀である。であるから、いくつかのパターンを考えておく必要があるのだ。
無論、PL諸氏も遊びたいからセッションに参加するのではあるが、あまり無理な導入ならPL、ひいてはPCにだって断る権利はあるし、その辺は
考慮しなければならない。情で動いてくれるキャラクターと、お金が主目的のキャラクターとでは、やはり行動指針は違ってくるし、この導入部が
うまくいくかどうかで、セッションの動きも変わってくるだろう。

C.情報の開放度の操作

いくつかGMの頭を悩ませる存在として、同じく頭を悩ませるのが、「情報をPCにどのように、どこまで与えるか?」という事がある。
これを情報の開放度と呼ぶとすると、この開放度が低いとPC達は行動指針が立てられずにフリーズするか、迷走を始める。
しかし、開放度が高くなると、情報が氾濫しすぎて収拾がつかなくなったりする。
では、どうするか?白夜氏は、これを下準備の段階(ステップの3,4)において、解決している。
つまり、まず、与えたい情報を用意しておいて、その後、PC達がどう動くかの予測を立て、それによって情報の増減をしていく。
そうする事で、的確に情報を出し、PC達を誘導する事を可能にしている。無論、推論が外れる事はあるだろうが、的確なやり方であるだろう。

D.推敲の重要さ

経験のある人も多いだろうが、つらつらと書き綴られた文章などは、どこか雑だったり、穴があったりするもんである。それをそのまま人に
読ませたりすると(その人が天才でもない限り)粗を指摘されるものである。
そういう粗や穴や矛盾などを読み返し、修正したり書き足したりする事を推敲という。シナリオの作成作業においても、この作業は重要である。
ここをするとしないとでは、やはりシナリオの完成度も違ってくる。そして、作ったシナリオを読み直すという事は、GM本人が頭の中で
「わかったつもりになっている」事を再確認するという意味もある。シナリオを作成している際にある失敗の一つはこの「わかったつもりになっている」
という事にある。つまり、GMの頭の中にある情報などがシナリオに反映されておらず、セッションが行なわれる際に、その「わかったつもりに
なっている」情報に関してはPC達に与えられておらず、そこの溝がある為に、どこか不完全になってしまう、といった自体である。
既成のリプレイなどでは、バトルテックリプレイ2巻「女神達の彷徨」がこれに近い。

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以上のような過程を通る事によって、シナリオを練りこむ事ができる。セッションに参加するメンバーと濃密なストーリーを堪能できると共に
GMをする諸君が、実際のマスタリングにおいて、より精神的に楽に、かつ確実なマスタリングをする事ができる事になるだろう。
無論、これが唯一無二の答えではない。あくまでも、シナリオ作成における1ケースを示したにすぎない。
各人が各人に合った、よりよいマスタリングの為のよりよいシナリオ構築法を確立してもらいたい。

今回の講義は以上で終了である。質問などは掲示板で受け付けるので、送って欲しい。
では、諸君らの検討を祈る。次回の講義でまた会おう。

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