終章 事の終わり

 ひっく、ひっくとしゃくりあげる声が聞こえる。
それは少女の泣き声だ。
が、悲しい涙ではない。
不安や悲しみ、せつなさ、そういった感情が救われた、暖かい涙だ。
声がくぐもって聞こえるのは、少女がその泣き顔を見せまいと、自分の唯一の肉親であり、頼りになる兄の胸で泣いているからだった。
胸にしがみつかれている兄のほうはといえば、どうしていいのかわからずに固まっている。
まぁ、それが彼の彼らしいところだが。
「不器用だねぇ、もうちょっとなんとかならないのかなぁ?」
そう言った青年はガヤンの聖印を身につけ、ガヤン神官をあらわすソードブレイカーを腰に下げていた。
「はっはっはっは。奴らしいだろうが。」
そういって豪快に笑った男はタマット信者だけの持つ槍『インペイラー』を携えている。
「それ、絶対レイ君にだけは言われたくないと思うわよ。」
腰に七色の布をつけ、アルリアナ信者の、蹴打術『ダルケス』を学んでいるものしか身につけないと言われるブーツを履いた少女がそういって茶化した。
「わたしも、そう思います……」
そこに同意したのはサリカ信者らしい質素な服を身につけた少女だ。
「なんだよ、それ?」不満顔でガヤン神官の青年、レイがそう言う。
「やれやれ。」
そういってタマット信者であるバッシュは「お手上げ」のポーズをして見せる。
「まったくですね……」
シェーンもまったく同感といった感じでバッシュに賛同した。
「でも、良かった。」
フラウベルがぽつりとそう言った。
なにげない言葉だけど。
みんなが本当にそう思った。
そして、みんながそれにうなずいたのだった。

 こうして、事件は終わりを迎えた。とらわれていた子供達は、そのほとんどが親元へ戻っていった。中には
ストリートキッズの仲間達の元へと帰っていったものもいる。レイ達の活躍で、闇タマットがひとつ壊滅した。
もっとも、残党が大量に残っている事を考えると、この町のガヤン神殿はしばらくは休む暇がないだろう。

 ディーラはレイ達によってガヤン神殿に引き渡された。
引き取ったガヤン神官が言うには、おそらく死罪になるだろうとの事だ。
後で聞かされた話によると、ガヤンによって立件されてた以外にも、少年少女をさらってきて、エリクサの材料にしていたらしい。
レイ達に出来るのは、無残に弄ばれた命に祈りを捧げる事だけだった。

 後、ガーウェンさんから預かった首飾りはガヤン神殿の人に頼むことになった。
話を聞いたガヤン神官の一人が引きうけてくれたのだ。
申し訳無い気もしないではないが、好意を無にするのも忍びなかったので、任せることにしたのだった。

 そしてレイ達の旅は続く。その旅の終わりには意外な結末が待っているのだが……。それはまた別の物語である。

This Story will be continued to the next Story………

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