著:南雲仁
アリーナには大勢の観客が入っていた。今か今かとコンサートの開始を待つ客は、もうすでに熱気で包まれている。
そんな中、6人の女の子達がばたばたと駆け込んでくる。
どうやら欧米人とのハーフらしい女性は片言っぽい日本語で一緒にいた小柄な少女に話し掛ける。
「なんとか間に合ったデース。」
「そうだねー、なんとかっ。」ちょっと息を切らしながらそう答える。
「早く座ろうよっ。」もう一人がそう促すと、残りの三人と共に、客席に座った。
間もなくして、場内の照明が暗くなり、ステージ上が舞台装置によって照らし出される。
ギターやベース、ドラムの音と共に、今日の歌姫の声がスピーカーを通して会場全体に広がっていく。
会場に来た観客達は、音楽に乗って、スタンディングでコンサートを楽しんでいる。
彼らは知らない。ほんの数時間前まで、ささやかな日常を守る為の戦いがあった事を。
彼らは知らない。日常がいつもどおり明日も明後日も続いていくような強固なものではなく、非常に壊れやすい事を。
地球の見る夢『ゼノスケープ』。それを垣間見た彼ら。
『現在』や『日常』を否定する『光の使徒』との戦いを宿命づけられながらも
日常がただの日常で、明日もまた、ただの日常として続いていく事。
それをなんとか守れたという事にちょっぴりホッとしながら。
地球の見る夢を垣間見た6人は、遥か遠い過去の歌声をだぶらせながら
その歌声に耳を傾けるのだった…………。
輪廻戦記ゼノスケープ・リプレイ『覚醒めの歌』〜終幕〜